|
|
政府なるものその分限を越えて暴政を行なうことあり。ここに至りて人民の分としてなすべき挙動はただ三ヵ条あるのみ。すなわち節を屈して政府に従うか、力をもって政府に敵対するか、正理を守りて身を棄つるか、この三ヵ条なり。
第一 節を屈して政府に従うははなはだよろしからず。人たる者は天の正道に従うをもって職分とす。しかるにその節を屈して政府人造の悪法に従うは、人たるの職分を破るものと言うべし。かつひとたび節を屈して不正の法に従うときは、後世子孫に悪例を遺(のこ)して天下一般の弊風を醸(かも)しなすべし。古来日本にても愚民の上に暴政府ありて、政府虚威を逞しゅうすれば人民はこれに震い恐れ、あるいは政府の処置を見て現に無理とは思いながら、事の理非を明らかに述べなば必ずその怒りに触れ、後日に至りて暗に役人らに窘(くる)しめらるることあらんを恐れて言うべきことをも言うものなし。その後日の恐れとは俗にいわゆる犬の糞でかたきなるものにて、人民はひたすらこの犬の糞を憚(はばか)り、いかなる無理にても政府の命には従うべきものと心得て、世上一般の気風をなし、ついに今日の浅ましき有様に陥りたるなり。すなわちこれ人民の節を屈して禍を後世に残したる一例と言うべし
学問のすすめ七編より
福澤はすげえだろ。カムイのアクロバティックな動きのように、言葉を自在に操るって感じだ
|
|